栃木県那須塩原市のJR那須塩原駅から車で数十分。那須高原の温泉リゾート地の近くに、三角屋根の貸別荘が数棟。その一つが、ニセ電話詐欺団の拠点だった。
 県警の捜査員が踏み込んだのは、十一月十日午後のこと。室内にいた男ら四人は、突入に驚いた表情を見せたという。中には、証拠隠滅を図ろうと、犯行に使っていた携帯電話をとっさに折って壊したり、水に溶ける紙に書いたメモをあらかじめ水を張って用意していたバケツに突っ込んだりした男もいた。
 四人は、息子を名乗って浄水器の購入トラブルを装うニセ電話詐欺の電話をかける「かけ子」とみられ、関東地方の貸別荘などを短期間で転々としながら犯行を繰り返していた疑いがある。
 「拠点急襲」と呼ばれる捜査手法は、犯人グループにデータや名簿を消去される時間を与えないなど、捜査上の効果が高いとされる。実際、この拠点急襲後は、県内で同じような浄水器の購入トラブルを装う詐欺被害は発生していない。
 県警は、ニセ電話がかかってきた人に捜査協力を求めて、現金を受け取りにきた「受け子」らの逮捕を目指す「だまされたふり作戦」を展開。今年は三百六十九回実施し、七十八人を摘発した。栃木県の拠点も、今年五月に受け子とみられる男を逮捕した事件の捜査を端緒に割り出した。
 だが、こうした地道な捜査やさまざまな啓発活動の一方で、被害は一向に収まる気配がない。
 今年十一月までの被害認知件数(未遂を含む)は、千十一件。うち、九百四十四件は実際に現金をだまし取られており、被害総額は三十三億五千百三十四万円に上る。現行の統計方法となった二〇一一年以降で最悪の件数となった昨年の八百七十五件(既遂八百二件、被害総額三十二億八千五十八万円)を一カ月を残して超えた。
 県警の分析では、今年の件数を押し上げたのは「還付金詐欺」。「医療費や保険料の還付がある」とニセ電話をかけ、無人の現金自動預払機(ATM)に誘い出した上、機械を操作させ、指定の口座に自ら振り込ませる手口だ。
 還付金詐欺の被害件数は、ニセ電話詐欺全体の三割強となる三百四十五件(被害総額四億七千百二十六万円)で、昨年より二百四十四件(同九千七百九十四万円)も増加。また、依然として親族をかたるオレオレ詐欺や架空請求詐欺も多い。
 県警生活安全総務課の担当者は「ニセ電話詐欺の電話がかかってきたら、一人では判断せずに誰かに相談することが大切。年末年始に家族で集まった時には、ニセ電話詐欺の話題を出して話をしてほしい」と呼び掛ける。
 (梅田歳晴)
 栃木県那須塩原市のJR那須塩原駅から車で数十分。那須高原の温泉リゾート地の近くに、三角屋根の貸別荘が数棟。その一つが、ニセ電話詐欺団の拠点だった。
 県警の捜査員が踏み込んだのは、十一月十日午後のこと。室内にいた男ら四人は、突入に驚いた表情を見せたという。中には、証拠隠滅を図ろうと、犯行に使っていた携帯電話をとっさに折って壊したり、水に溶ける紙に書いたメモをあらかじめ水を張って用意していたバケツに突っ込んだりした男もいた。
 四人は、息子を名乗って浄水器の購入トラブルを装うニセ電話詐欺の電話をかける「かけ子」とみられ、関東地方の貸別荘などを短期間で転々としながら犯行を繰り返していた疑いがある。
 「拠点急襲」と呼ばれる捜査手法は、犯人グループにデータや名簿を消去される時間を与えないなど、捜査上の効果が高いとされる。実際、この拠点急襲後は、県内で同じような浄水器の購入トラブルを装う詐欺被害は発生していない。
 県警は、ニセ電話がかかってきた人に捜査協力を求めて、現金を受け取りにきた「受け子」らの逮捕を目指す「だまされたふり作戦」を展開。今年は三百六十九回実施し、七十八人を摘発した。栃木県の拠点も、今年五月に受け子とみられる男を逮捕した事件の捜査を端緒に割り出した。
 だが、こうした地道な捜査やさまざまな啓発活動の一方で、被害は一向に収まる気配がない。
 今年十一月までの被害認知件数(未遂を含む)は、千十一件。うち、九百四十四件は実際に現金をだまし取られており、被害総額は三十三億五千百三十四万円に上る。現行の統計方法となった二〇一一年以降で最悪の件数となった昨年の八百七十五件(既遂八百二件、被害総額三十二億八千五十八万円)を一カ月を残して超えた。
 県警の分析では、今年の件数を押し上げたのは「還付金詐欺」。「医療費や保険料の還付がある」とニセ電話をかけ、無人の現金自動預払機(ATM)に誘い出した上、機械を操作させ、指定の口座に自ら振り込ませる手口だ。
 還付金詐欺の被害件数は、ニセ電話詐欺全体の三割強となる三百四十五件(被害総額四億七千百二十六万円)で、昨年より二百四十四件(同九千七百九十四万円)も増加。また、依然として親族をかたるオレオレ詐欺や架空請求詐欺も多い。
 県警生活安全総務課の担当者は「ニセ電話詐欺の電話がかかってきたら、一人では判断せずに誰かに相談することが大切。年末年始に家族で集まった時には、ニセ電話詐欺の話題を出して話をしてほしい」と呼び掛ける。
 (梅田歳晴)

引用元 <事件事故ファイル2016>(下) ニセ電話詐欺:愛知:中日新聞(CHUNICHI Web)