端から不吉なことをいうようだが、日本人の自殺率は先進国の中では最高である。高齢者のそれは一段と高い。犯罪率を年齢層別にみると60歳を超えるあたりから急上昇しており、日本は高齢者の犯罪率においても世界に顔向けできる国ではない。
 他方、日本人の平均寿命は2015年において過去最高、世界でも最高位に近い。日本人の平均寿命が最高水準に達する一方、高齢者の自殺率や犯罪率は世界的にみて高率なのである。
≪長命を追い求め過ぎた帰結≫
 「健康寿命」という概念がある。“健康上の理由によって日常生活が制限されることなく維持できる生存期間”である。平均寿命と健康寿命との差が“日常生活に制限のある健康ではない生存期間”となる。この差は男性9・1年、女性12・7年だと厚生労働省の統計が証している。
 健康寿命を延長させなければ、高齢者のQOL(生活の質)の低下が避けられず、医療費や介護給付費が増大して社会保障システムが毀損(きそん)されかねない、とも厚労省はいう。健康寿命の延長が可能であればそれに越したことはない。
 新聞やテレビのコマーシャルは高齢者の健康増進のための器具やサプリメントのオンパレードである。健康寿命の延長に多少の効用はあるのかもしれないが、あくまで「多少」であろう。
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引用元 【正論】年頭にあたり 家族や国家巻き込む「長呪」の危険性 超高齢化社会をどう生きるか 拓殖大学学事顧問・渡辺利夫(1/4ページ) – 産経ニュース